少女は走り出した。希望を胸に携えて。
「私は悪じゃない!遠くに行くから、もう関わらないで!」
「黙れ、俺の剣は正義のためだけにある!」
しかし、その思いはすぐに打ち砕かれる。
「捕まえろ!悪の魔法使いに鉄槌を!処刑だ!」
人々は、少女を悪の魔法使いだと思っている。それが事実でも冤罪でも構わない。処刑だけが望みだった。
「正義の剣、万歳!その剣を悪魔に振り下ろしてくれ、騎士様!」
衆人は声を上げる。
「当然のことをしたまでだ」
男は毅然として応じた。
その気持ちは、男にとっても同じだったらしい。
「どうして……?」
男は王国の騎士。少女がずっとひそかに愛していた相手だ。
男が少女の手をしっかりと掴む。今は、少女の細い手に拘束など影も形も見当たらない。
彼は少女のあこがれであり、希望だった。
「悪による恐怖は、今ここに終わる。自由になれ!」
しかし、男が声高に叫ぶ。
今の彼女は絶望していた。
……少女は冤罪を晴らせずに捕らわれている。手首にも足首にも、厳重な拘束器具が取り付られてしまった。
一筋の涙が少女の頬を伝った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ちなみに、この後に幼馴染の男は少女が無実だと気が付く。
しかし少女は獄中死して時すでに遅し。絶望に呑まれた騎士は、もういない彼女への謝罪を手紙につづり自死したそうだ。
こんな終わり方が許されるのだろうか?
実はこの話にはもう1人の登場人物がいる。そう、語り手である僕自身だ。僕こそが本物の「悪の魔法使い」。時間を戻す魔法を使って毎日いたずらを楽しんでいる。
……ま、そのせいで悪人扱いされているらしいが。しかも自分のせいで冤罪がでるとは思わなかった。
でも、僕が好きなのはハッピーエンドの物語だ。だから時を戻してしまおう!
君も手伝ってくれよ。なに、難しいことじゃない。青い点線よりも上の部分を、逆向きに読めばいいだけさ。下から上にね。
僕は騎士に、彼自身が書いた手紙を持っていこう。それで冤罪に気が付いてくれるはずだ。
僕らのやり方で、救いに行こうじゃないか。
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ぴの - すごい…!!!!占ツクでこんなに感動したのは初めてです…!!文章力といいい、物語の出来といい、こんなに感動したのは初めてです!!この作品に出会えてとてもうれしいです!(誰目線)ほかの作品もぜひ読まさせていただきます!! (5月12日 14時) (レス) id: b4c75ae4f1 (このIDを非表示/違反報告)
中二病メープル(プロフ) - 凄すぎる…!上からでも下からでも意味が通じるし、ちゃんと面白いし…!流石です! (5月4日 9時) (レス) id: df9d4043c9 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - 凄すぎる…!時間を戻せる主さんならではの救い方ですね! (4月21日 21時) (レス) id: 8875507bce (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - アスナさん» コメントありがとうございます!今後も魅力的なシステムを沢山採用していきますね (2月28日 21時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
アスナ(プロフ) - すごい...!よくこんな上手な物語書けますね...!いいな〜その才能が羨ましい(( (2月27日 17時) (レス) id: 0e594bd947 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2024年2月15日 18時